ジェラルミンケース

施設のおじいさんは

とにかくお金に執着した

あの世までは持っていけないのにとよくゴジラと話をしていた

 

ちょうどそのころ円安が始まったころだった

おじいさんは証券会社の担当者によく電話をして

ドルを買っていた

証券会社の履歴を見ると

株もやってたみたいだけどそっちの方は

力を発揮できなかったっほい

信じられないけどドルの売買は功を奏して

見事に数か月の間に数百万稼いでいた

お金持ちってのはこうやってお金を稼ぐんだと感心したよ

 

やっぱり過去にいろいろあったんだろうけど

なんせ人を信用しないからお金に関することは自分がいちいち

確認をしてゴジラと一緒に印鑑を押していた

ネットバンキングのこのご時世に

FAXでいろいろ払ってました(何年ぶりにこの処理をみただろう)

 

ある時なんてビルを売ったお金だったかな

一つだけ持っていたビルだけど

老朽化もあるから手放したんだろうと思うけど

その代金の一部を銀行の人にわざわざ持ってこさせてた

呼ばれた銀行員は

仰々しくジェラルミンケースを持ってきてたよ

 

そうやってほいほい銀行員を呼びつけられる力が

本当にあったのか知らんけど

何もこのデジタルの世の中で

今時、時間かけて現金持ってこさせる必要ありますか??

って思ったんだよ

そういう所にほんとついていけなかった

私の腰がさらに浮くのを感じたよ

 

でもある日、どんどん円の価値下がっていて

まさか、そんな、こんなに?みたいに下がっていた時に

数百万稼いだおじいさんはボソっとつぶやいたんだ

「これでうちの施設はいくらか持つかな」って

 

日常

Posted by ぷー子