平均年齢
毎日、怯えて働いていた介護の世界から逃げ出すチャンスをくれた
のも介護の世界だった
年配の女性から電話が来て、その日はちょうど休みの日だったから
そのまま面接に駆けつけて採用が決まった
丘の上の白い洋館
昔風のお城みたいな老人ホームの事務
ご年配の世代だったらこのお城に住みたいと思うのかもしれない
受付で出てきてくれた事務の制服を着た人は、私より年上そうな女性だった
お城の中も白くて、奥のこれまた洋風な扉の部屋に案内された
キャビネットとジャングルみたいな植物が窓際にボコボコと置いてある雑然とした部屋
面接に出てきてくれた人は、これまたすごく年配の気取った女性だった
この人が電話をくれたらしい
昔のキャリアを感じさせるしぐさの人だったが、こんなに年配の面接官は
初めてだった
何十年振りかみたいな、性格診断試験を受けさせられ
その時は、介護でメンタルやられてたから
あなたは自信がないのね、みたいなもっともらしい分析をされた
ずっと気になってたんだけど
向こう側にもう一つ部屋があるらしく
そこに、誰かがいるようだった
なんだか新聞を読んでいるような、いないような
曇りガラスで良く見えなかったけど
あれは誰?誰?
ご利用者さんがいるの?
と面接しながら思っていた
一通り話が済んだ後、
向こう側とこちらを隔てた白い何層もある引き戸をスライドさせて
色のやや黒い
ワイシャツの第一ボタンを外して、自分の体よりやや大きめのジャケットを
羽織ったヨレっとしたおじいさんが
「理事長」と言ってあらわれた
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