運転しなくても結局怖かった
施設はデイサービスだった。
利用者の人数が多いため、小さいところだとヘルパーが車で迎えに行くところ
送迎専用の車両を抱えた施設。
だから、運転はしなくていいんだ。
初心者の私は、ただひたすらご利用者様とコミュニケーションをとるように
言われた。
もともと人付き合いが苦手な私にいきなりの大人数を前にコミュニケーションをとれだなんて。
ま、そんなことは、施設の知ったことではない。
後ろに道がないと必死だった私はコミュニケーションにかじりついた。
通常でも初対面の人に何を話せばいいのか困る。
しかもご年配の相手はしたことがない。
(しいて母くらいだがもう何年も前の話だ)
一日ただ無駄話をご利用者様としろと言われてすごく苦痛だった。
もちろんそれが顔に出ていたんだと思う。
後で表情を注意された。不安な顔はご年配を心配させる、と。
そして送迎。これがすごく怖かった。
雨の日も風の日もデイサービスは365日やっている。
ご利用者様はいろんな方がいる。
認知症の人。麻痺の人。車椅子の人。
そのすべての命をヘルパーは預かって送り迎えをするのだ。
ドライバーはどちらかというと運転が主でご利用者様の責任は
ヘルパーにある。
そのことが、すごく恐ろしかった。
まったく何もわからないのに、足元もおぼつかないご年配の命を預かる。
考えすぎだろうか。
その時の私は送迎がすごく恐くて、毎日その時間の天気が悪くないようにと
祈っていた。
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