フーガはユーガ 伊坂幸太郎
面白い発想だった。
本だから何でもありなはずなのに、妙に制限してるのがまた面白い。
そして、勧善懲悪とかいうんでもない。
ただ、本人たちの気持ちで悪人に立ち向かっていく。
だから、すごくスッキリするわけでもない。
仕掛けが仕掛けだから、スーパーマンみたくなるわけではなくて。
やっぱり、終わり方はモヤッとするやつだ。
でも、確かにあとがきの人も言ってるけど、最初から最後まで「僕」が語っているのが良かったなーと
二回目に呼んであらためて思った。
主人公たちは虐待を受けている。
力の弱い立場の者が、力を持つ者に。
その理不尽さは半端ない。
半端ない虐待に奇想天外さで対抗していく。
誰も気がつかない場所で、決して太刀打ちできない相手に虐待される。
その瞬間、逃げることができたら。
でもどこに逃げる。逃げる方法もわからない。
そんな勇気もない。気がつくとただただ相手におびえる自分になってしまっている。
私も子供のころ、酔った父に暴力をふるわれた。
長いこと、手を振り上げられる動作だけでびくつく自分がいたのを覚えている。
その動作だけで涙が出そうになる
たとえそれが父でなくても。
それほど虐待は体に染み込む。
物語の中では、双子の主人公が交互に虐待に立ち向かっていく。
一人の私には誰も交代してくれる人はいなかった。
数年、父と二人だけで過ごす期間を経たのち
その地獄から私を救い出してくれたのは、先に脱出していた母だった。
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