救急車　



娘が救急車で運ばれた

 

その日は通院している消化器内科を１６時から予約していた

朝から調子が悪くてずっと胃が痛いと言っていたが

１６時までなんとか持たして病院行こうと思っていた

だけど昼前からもう持たないって話になって近くの病院を探すことになった

予約していた病院は二つ先の駅にある病院だったから

この痛みはすぐに駆け込める病院がいいだろうと思った

よく行く内科医に電話してみた

症状を説明したら胃の専門医ではないから難しいと断られた

では、駅周辺の消化器内科なら、と思って電話してみた

１６時からの病院は数か月前から通っていて、胃カメラやピロリ菌の検査は終わっていた

それでも痛みが治まらない

そんな経緯を話してみたが、結局は初診だから同じ検査を行うところから始まるから難しいと断られた

私とそう年齢が変わらなそうな受付の女性は気の毒そうな声だった

それなら、もう１６時からの病院にあまりに痛いので今から行ってもいいか聞いてみようと考えた

その最中も娘は胃痛に苦しんでいた

ネットで検索して評判の良かったこの病院は、こっちがいくら痛いと説明しても予約外は難しいと冷たく断った

「じゃあ他を探します」と電話を切ろうとしたとき、あのきれいな受付のお姉さんは「じゃあ、ご予約は取り消しますか」とまで聞いてきた

こうなったら、もう何年も行っていない子供が小さいときに通っていた病院に行こうと思った

痛がる娘を無理やり起こして、外に出る

ヨタヨタ歩く娘を連れながら通りまで出ようとしたが、「もう歩けない」と彼女はうずくまってしまった

タクシーだ　タクシー

残念ながら時間は’あの’病院が閉まってしまう昼の時間になってしまっていた

電話でこの時間帯にやっている救急病院をさがす

実は一つの救急病院は、すでに先々月同じ症状で駆け込んで何もしてくれなかった病院だ

他に診てくれるところはないのか問い合わせる

よりによってもう救急病院は夜の１１時からしか受け付けないところしかないという

どうすればいいのこの魔の時間

午後の診察が始まるまでのこの魔の時間に取り残されたうちの娘はどうすればいいの？

と本当に困った

とても予約の１６時まで待てそうにない

救急車を気軽に呼ぶなと言われているが、果たして今回は「気軽」に入るのか、入らないのか

もうやれることがないのだから、呼ぶしかない！と腹をくくって１１９番に電話をした

かくして娘は数か月の消化器内科の通院と食べられない日々の果てに、救急車で運ばれるはめになってしまったのでした