どこも似たようなものですよ~ 

こんな風に会社を辞める前に、私だってきちんと次の会社を決めてから辞めるって段取りは考えていた。

休日の私は腑抜けであんまり役に立たなかったけど、求人情報をチェックしなかったわけじゃない。

辞めた会社には自転車で通っていて、長いこと電車には乗っていなかったけど、なんとか一時間程度ならと

応募範囲を都内まで広げて求人情報をチェックはしていた。

 

1件、その中で目に留まった都内のある会社に履歴書を送ってみた。

 

すっかり書き方を忘れていた経歴書なんか書いたりして

今はどんな感じなのかと、よりによって自分を悩ました中途採用の後輩の履歴書を参考にしたりした。

まったくトホホだ。

 

記入しながら、はて自分はあの会社で何をして何をアピールできるんだろうかと振り返る。

思い起こせば自分を苦しめた事柄が、意外にも自分がやってきたことだと

それこそが胸を張ってやったことだと思うのは皮肉なものだ。

 

その都内の会社から面接の連絡がきた。

自分の経歴書の書き方が通用するんだと喜んだりした。

 

面接は私と同じ年くらいの上司と若めの部下とどちらも男性だった。

女性でも責任ある仕事につけることに興味があることを伝え、現在の会社は評価がされにくいと私は言った。

(採用されたらこの人の下で働くのか・・・)、と思った上司が

「うちの会社でも女性の立場が変わったのはここ10年位だものな」と、丁寧な対応をする若めの部下に同意を求めた。

その発言は暗に「どこも似たようなものですよ」と言っているようだった。

 

そういえば、最近会社でなんだか自己啓発のために行かされたセミナーでも

そんな感じだったのを思い出した。

何がテーマだったか忘れたけど、女性対象のセミナーで

中間管理職の女性や、社内で中堅にあたる年代の女性が集まっていた。

色んな業種の人達が来てたけど、口々に女性の管理職が会社で初めての経験で

これから模索していかなければならないって話していた。

 

女性でも活躍できるみたいなアピールだった面接の会社も、世の中も

女の人の立場はまだまだこれから開拓していかなければならない。

開拓の舞台が用意されたってのに、いざその場に立とうとしたら自分は

たいした取柄もなくって、すっかり戦力外だった。

 

上司「失礼ですがなぜこの年齢で転職を?」

私「異なる業界の総務の仕事がどのようなものかと経験してみたかったからです」

上司「その年齢で他の会社の総務の仕事って、(あなた)どこも似たようなものですよ~」

すっかり、馬鹿にしたような態度で言われた。

(いい歳してあんた馬鹿じゃないの)

私は、せいぜい(こいつが、上司だったら絶対うまくいかない)断られて良かったんだと

自分に言うのが精いっぱいだった。

 

日々、「条件はいい」という麻薬に揺れていた自分は、この面接ですっかりやられて

求職活動はしなくなっていた。