受け継いでいない

親父は趣味が多かった

前にも書いた庭いじりが好きだし

釣りもよく連れていかれた

で、帰ってきてその魚をさばいたりして

料理もよくやってた

 

なぜだかわからないけど、ろくにプレゼントも買ったことのないのに

グローブを買ってくれて

キャッチボールをした

相手が女の子だってことを忘れているのか

いつも手が痛いボールだった

そういう意味では男の子が欲しかったんじゃないかと思う

そんな話を聞いたような気もする

 

黙って付き合ってくれるのが、娘しかいなかったから

私はその趣味によく付き合わされた

釣りにも盆栽いじりの道具を買いに行くのも

二人で暮らしていた時は子供を残していけないからか

居酒屋にも連れていかれた

果てはテントを張った夜釣りまで

 

残念ながら私はどれも好きではなかった

ただ留守番もできなくて、ついていっただけだ

だから今でもどの趣味も残念ながら受け継いでいない

その手先の器用さも持ち合わせていない

 

小学生のある日、釣りの帰り

すっかり夜になってしまった川のそばを歩いている時に

あっと思ったら

川に落ちてしまった

私はどんくさいのか、落ちても

落ちたなくらいしか思っていなかった

気がついたら水の中

だから暴れることもなかったと思う

そしたら父がすぐに飛び込んで

私を土手に引き上げた

 

父は外面がよくて人付き合いがうまいのか

知らない人でもすぐ仲良くなれた

昔だったこともあるけど

夜にずぶ濡れの親子は見知らぬ食堂で

店主にお世話になって

店にあったストーブで服を乾かしたんだった

 

べつにそのことでその後も

釣りが嫌いになるとかはなかった

今でも水に入ったな的な思い出がある

そしてすぐに父が飛び込んでくる姿も見た気がする

 

家族

Posted by ぷー子