腕がもげるかと思った紙袋
向かえた水曜日
打ち合わせによく使った会議室に案内されて
上司と向き合った
退職するのに、引き金を引いた張本人にその旨を伝えなくてはいけないのが
複雑で
なおかつ、その状態が私を悩ましたことの象徴でもあったと思う
退職の理由に上司がかかわっているか聞かれたとき
「はっきり言ってほしい 私のせいだと」と言われた
意を正した姿勢は、はっきり言うことで上司の助けになるような印象を受けた
私は、あなたにも原因があると言いながらもお茶を濁した
実際、理由はそれだけではなかったから
(「はっきり言ってほしい」ってどういう意味なのか
この期に及んで、上司が楽をしようとしている気がして
私の中に、不快な気持ちが残ったのは事実だ)
引継ぎの話になった
私はこの日、覚悟をしていた
本来なら、もう少し我慢すれば賞与が支給されていた
有休を使って在籍にして賞与をもらってから辞めても良かった
辞めたら、何にもない
同じ条件で再就職も難しいだろう
路頭に迷う身としては、下世話な話だが、1円でもほしい
葛藤したが、
それは止めた
私が退職しても最初は人が足りなくて四苦八苦するかもしれないが
あっという間に慣れて、なにごともなく部署は存在するんだろう
それでも、辞めることで少しは、会社に痛みを
些細な爪痕を、残してもよいだろう
何故なら、円満退職ではないのだから
引継ぎはしない
今日以降一切出社しない
社会人としてまったく非常識な辞め方なのはわかっていた
関係のない後輩に、迷惑かけるのも十分に理解していた
それでも
賞与を貰わず、退職後、路頭に迷うかもしれない非常識な自分と
引継ぎなしで部署を回さなければならない会社と
もろ刃の剣
おおげさかもしれないけど、刺し違える覚悟で、来た
何回か、引継ぎの攻防がされたけど
「会社のためになることは一切したくない」
そう言って
機関銃のような引継ぎをして
会社を逃げるように後にした
腕がもげるかと思った二つの紙袋をもって
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